02−01−4;小腸大腸疾患
感染性腸炎
- 大腸由来であれば、下痢は朝が最もひどく、排便によって腹痛が軽減し粘液や血液が混じることがある。
- 小腸由来であれば、特定の時間帯に増悪することはなく、排便によっても腹痛は改善されない。便の正常は白っぽい脂肪便が特徴的であり血液や粘液を含まない。病原体としてはランブル鞭毛虫(Gialdia
lambia)、Campylobacter、ロタウイルス、Cryptosporidium,Strongyloidesなどがある。小腸由来の下痢が遷延する場合は熱帯性スプルー、セリアック病、慢性膵炎などの非感染性の吸収不全症を考える。
カンピロバクター腸炎
- 潰瘍性大腸炎と鑑別が難しいことがあるが、回盲弁の潰瘍形成は特徴的といわれる。
小腸
NSAIDs小腸障害
- プロスタグランジン製剤、レバミピド、プロバイオティクス(L.casei,VSL#3)の有効性を示す報告がある。
大腸
大腸憩室
- 合併症としては、出血4%、憩室炎2.5%。
- 年齢別は30歳以下では3.5%、40歳代で12.8%、70歳代で17.8%。
- 従来男性に多かったが、女性も増えてきている。
- 腸管内圧の上昇により直動静脈が腸壁を貫く部位で脆弱化し粘膜が脱出(仮性憩室)することが発生機序として考えられている。
炎症性腸疾患
- 喫煙とCrohn病は関連があるが、潰瘍性大腸炎は非喫煙者に多く発症する。
潰瘍性大腸炎
- 5-ASA製剤は局所粘膜に作用し効果を発揮する。投与量に比例し治療効果が増加するが、副作用は増加しない。
大腸ポリープ
大腸鋸歯状病変
1.Hyperplastic polyp(HP)過形成ポリープ
左側結腸と直腸に多い。malignant potentialは低い。Microvesucular HPが大部分
直腸、S状結腸の5mm以下のHPは放置。
右側結腸の10mm以上のHPは、SSA/Pと鑑別困難なことから切除するべき(2014ガイドライン)
2.Traditional serrated adenoma(TSA)古典的鋸歯状腺腫
松ぼっくり様 5mm以上をEMRで治療
3.Sessile serrated adenoma(/polyp) SSA SSA/P
右側結腸に多い ほとんどが粘液を付着。色素内視鏡では開大したII型pit(腺腫はIII型)。
NBI拡大ではMCpatternを示さず(brownishでない)、小樹枝状血管あり
5mm又は10mm以上は切除すべき
SSA/Pに合併した癌;高齢女性に多い。BRAF変異が高率。
以上のMixed Typeもある
大腸がん
疫学
リスク
- BMI30以上であれば、正常範囲の人に比べ1.4倍のリスク
- 便秘はよくない
- 飲酒は2合以上であると、リスクは2.1倍。
- 喫煙はリスクが1.4倍
- 糖尿病は肥満と独立して大腸がんのリスクを43%増加させ、高血糖自体が大腸がんや腺腫と相関することが証明されている。
発がん
1.Adenoma-Carcinoma Sequence(染色体不安定型)
- 5番染色体のAPC遺伝子に欠失または変異。
- RAS変異
- 17番染色体のp53に欠失または変異。腺腫内癌ができる。
- 18番染色体のDPC4に変異。または8qLOH、22qLOH で進行がんへ
2.De novo Cancer
- p53にいきなり変異。微小癌(IIc型。その後種々の遺伝子異常で進行がんへ
3.Serrated pathway 大腸がんの15〜30%
MSI status
- マイクロサテライト不安定性(Microsatellite instability;MSI)は、ミスマッチ修復(Mismatch Repair;MMR)遺伝子の機能異常によるDNA複製エラーを反映する指標で、マイクロサテライトマーカーにおけるCA繰り返し配列の異常として検出される。
- MLH1,MSH2遺伝子など、ミスマッチ遺伝子の生殖細胞レベルでの異常は、大腸がん(遺伝性非ポリポージス大腸がん;Hereditary non-polyposis
colorectal cancer;HNPCC)や子宮内膜癌などの発症リスクが高く、リンチ症候群と呼ばれる。一方、孤発性大腸がんにおいても10〜15%程度でMSIが見られる。
- MSIは大腸がんの発育進展に深く関与し、メタアナリシスではMSIが高い(MSI-H)大腸癌は、マイクロサテライト不安定のない(Microsatellite
stabel;MSS)大腸癌と比較して、右側結腸に多い、低分化型、粘液型が多い、BRAF変異陽性が多い、などの特徴がある。またStageII,IIIではMSI大腸癌はMSS大腸癌よりも再発率が低く、予後が良好であると報告されている。
検診
- 便潜血検査では採便後5日以内に検査を(冷暗所に保管した上)
- 要精密検査になるのは5.8%程。その中で大腸がんが見つかるのは4%(多い県で)。その8倍ほどが腺腫。痔核があるのは2倍ぐらいの症例数。
- 年1回の便潜血検査と大腸内視鏡の組み合わせで大腸がん死亡率を30%程度低下させられるといわれる。
- 大腸内視鏡を10年に1回すると死亡率が1/4になるとの報告もある。
- 1cm以下の大きさ、かつ、2個以下の管状腺腫ポリープが発見された場合の経過観察の大腸内視鏡検査は5〜10年後に行い、3個以上10個以下、絨毛性腺腫、高度異型性の場合は3年後、11個以上の場合は3年以内といった目安。
- 比較的短期間でがんへ進展していく症例;鋸歯状腺腫(serrated adenoma)で異型性のあるものや右側結腸にあるもののリスクが高い。
- 検診前にアスピリンやNSAIDs服薬を中止する必要はないと結論づけられている(RCTやコホート)。
- 大腸がん検診の便潜血検査では進行がんの約80%、早期癌の約50%が検出可能とされている。
病態
- MSI APC KRAS PTEN SMADなど多段階発がんである。
再発
- StageIでは3.7%、StageIIでは12.5%、リンパ節の転移が3個以下のStageIIIaでは24.1%、4個以上のStageIIIbでは40.8%。
- StageIIIから術後補助化学療法がおこなわれる。5年生存率は約20%向上するといわれる。
化学療法
- stageIIでは術後補助化学療法の有用性は証明されていない。
IIIaの場合
フルオロウラシル+ホリナートカルシウム(フルオロウラシルの効果を高める)
- それぞれを5分と2時間で点滴。1週間に1回通院しての治療を6週間続け、2週間休む。
カペシタビン
- 1日に朝夕服用。2週間継続して1週間休む。手足症候群(指先の皮膚の発赤、割れる)の問題。
テガフール・ウラシル配合剤+ホリナートカルシウム
- 1日に3回服用。4週間継続して1週間休む。下痢と口内炎が問題
IIIbの場足
フルオロウラシル+ホリナートカルシウム+オキサリプラチン(FOLFOX)
- 2時間の点滴の後、5分のフルオロウラシル点滴。その後フルオロウラシルを46時間持続点滴。2週間に1回施行
オキサリプラチン+カペシタビン(XELOX)
- オキサリプラチン2時間点滴し、帰宅後カペシタビンを1日2回朝夕内服を2週間。1週間休む。3週間のサイクルを繰り返す。
治療薬
- EGFR抗体薬はKRASの遺伝子変異を認める大腸がん(全体の約40%)には効果がない。
- 塩酸イリノテカンは腎臓のUGT1A1の酵素によってグルクロン酸抱合される。UGT1A1の遺伝子多型は日本人では*28と*6が多く、ホモの異常は好中球減少症を来しやすい。
便秘
治療
酸化マグネシウム
- 腸内の浸透圧を高めて体内から水分を引き出し、便を軟らかくする。
- 腎不全では投薬注意
- 長期服用により高マグネシウム血症が生じ、徐脈性の不整脈から心停止を生じるリスクがある。